フォーン・ブース [DVD]

ウダウダしてなくってスカッとした良い映画です。
LAの街中でたった10日間、時系列に沿ったスケジュールで撮影されたということですがザツさは微塵もなく、そのことがかえってこの映画のシンプルさに確かな臨場感を生む結果となって現れています。
たとえばカトリック教徒の懺悔というものに馴染みのない日本人にも、この映画が“懺悔と再生の物語”だと言われればピンとくるのではないでしょうか。
主人公は、イタリア製のクールなスーツに身を包み2000ドルのニセモノ高級腕時計をつけて、NYマンハッタンで活躍するフリーのメディアコンサルタントです。
タダ同然で純朴な若者をコキつかい、大股で往来を歩きながら大きな声で携帯電話の相手や街の飲食店主に向かって傲慢かつテキトーな言葉を吐く。口先だけで生きている、けれども悪党にはなりきれない男。
きちんと自分を愛してくれている妻がいながら、女優志望の若い女の子に親切にふるまいつつ口説きオトそうと必死に電話攻勢。携帯から電話したのでは通話記録が残るので、彼女に電話するときは公衆電話ボックス(phone booth)を使うのです。そこが彼にとっての懺悔の舞台になるとも知らず、結婚指輪を外して彼は今日も彼女に電話を…。
ボックスを出ようとしたところでその公衆電話が鳴り、なにげなく受話器をとったところから事件が始まります。
たった81分間。リアルタイムで進行するドラマにあっというまに引き込まれて、その短さを感じさせません。ちょうどイイ感じ。
人はなにかきっかけがあればここまで真の自分の姿を曝け出すこともできるのか、と思いました。この主人公はド派手な“懺悔”によって見ず知らずの犯人に人生や日常を壊されます。確かにこれは脅迫・暴力ではありますが、観ている私がなんともいえない爽快感を覚えるのはたぶん自分にもどこか“本当の自分”というものを隠しているところがあって、そのことに気づかされたからかもしれません。
コリン・ファレルも男前ですけど、刑事役のフォレスト・ウィティカーがもっと素敵。大好きなんです。『パニック・ルーム [DVD]』で出てくる黒人の俳優さん。あれもよかったなぁ。
そうそう、このDVDの特典映像観るのは本編の後のほうがいいですよ。ネタバレだらけですからね〜。

私的評価(五つ星が最高)

  • 緊迫度 ★★★★★
  • 爽快度 ★★★★★
  • 予測不可能度 ★★★★